『秘密』 東野圭吾 > 「このミス」完全読破 No.10
「このミステリーがすごい!」完全読破 No.10
『秘密』 東野圭吾
「このミス」1999年版 : 9位
受賞(候補) : 「日本推理作家協会賞」受賞
(「直木三十五賞」候補)
(「吉川英治文学新人賞」候補)
総合ランキング :
年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 3位
「本格ミステリ・ベスト10」 16位
読始:2006.4.18 ~ 読終:2006.4.18
読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"
読んだ版 : 文庫本 <2001年5月>
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先日、今年(2008年)に入ってからの“「このミス」完全読破”の記事ごとのアクセス数をまとめてみたのですが、なんと90冊近くもあるというのに全ての作品が一度はアクセスされていたんですねェ。
「このミス」にランクインしたといえども、今の時代からしたらかなり地味でマニアックな存在となった作品も中にはあるので、そんな作品にも一度は、というか正確には数度なのですが、アクセスがあるのには驚きました。
......が、しかし!!よ~く見てみると、一度もアクセスされてない作品が一つだけあったんですねェ。
“そんなに人気のない作品は一体なんなんだ!?”って、そのアクセスされていない“No.10”の作品が何なのか興味深く調べてみましたら、なんてことはない、いまだに感想記事を書いていなかったこの「秘密」(東野圭吾)だったのです。
この作品は、読後に話を振りかえったり感想を書いたりすることは精神的に厳しくて、ほとぼりが冷めた頃にでも書こうと思っていたのですが、なんかそのまま有耶無耶のまま時が過ぎて、感想をまだ書いていないことをすっかり忘れてしまっていました。
ただ、思い出したからには書かなければなりませんね。幸い、読んでから2年以上経ってしまったとはいえ、話の内容も、読んだ時に感じていたことも、強烈な印象として残っているので、ここでけじめをつける意味でもしっかりと書いてみたいと思います。
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この作品は、妻と娘が一緒に交通事故に逢ってしまうところから始まるのですが、その事故では残念ながら妻は亡くなってしまうものの、娘の方は奇跡的にも命を吹き返すことが出来たのです。
だけど実は、脳死状態にあった娘の身体に妻の精神が乗り移っていて、このことを2人だけの“秘密”として生きていくわけです。そんな夫と娘の姿をした妻との人生を描くという、設定としてはSF的な作品ですね。
しかし、最後の最後に、平凡ともいえるこの「秘密」というタイトルにとてつもなく重く深い意味が含まれていたことを知るに至って、この作品が紛れもないミステリであったことがわかるのです。
まあ作品の内容からして、男女の違いによってこの作品に対して受ける印象というのは全く異なるものがあるようです。それは、夫に対して感情移入するのか、妻に対して感情移入するのかの違いなのかもしれません。
その一方で、読後に不快な思いをしたり、中には本に触れるのも嫌なくらいに嫌悪感を抱いてしまう人も多くいるようで、こちらは男女による違いはない感じです。
というように、良い意味でも悪い意味でも読後にかなりのインパクトを与えてくれる作品なわけですが、読む人のそれまで培ってきた人生によって解釈の仕方も全く変わってしまうので、夫や妻と、恋人と、友達と、家族と、この作品を読んで感じたことを話し合うのも面白いと思いますね。
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それで自分自身はどうだったかといいますと、まあ感想を書けなかったくらいなんでかなりの影響があったことは隠しきれないですよね。
とにかく自分が経験した過去の出来事と心理状態がすごく似ていて、それでまいっちゃったのです。といっても、別に“娘の身体に妻の精神が乗り移って....”ということを経験したのではもちろんないし、この作品における衝撃度と比べたら可愛いもんなんだろうけど、それでもなんか奥底に通じるのは同じ種類のものに感じられて、なんか自分の中でタブーな存在として隠れて生き続けてきた物を鋭い針で一撃され、その存在を否応無しに思い出させられてしまったようでした。
その要因というのは、もちろんラストで明かされる衝撃の事実、痛いほどの決断に端を発してのことなのですが、これがホントに主人公が乗り移ってきたかのように同化して感じ入ってしまい、受け入れるのが辛かったですねェ。
まあ上で言った“決断”、しかも一方が先に下した“決断”というのがこの作品を語る上でとても重要な役割となっていて、その“決断”の是非を巡って論争が起きたりするのですが、自分が一撃されたのもまさにこの部分でした。
ただ、改めて冷静に考えてみたら、この夫婦の関係というのはとても異常なものなので、どちらか一方、または両者ともに全く傷つくことなく人生を送っていくことは出来ないと思うのです。必ずどこかで何らかの“決断”を下さねばならず、その際にお互いが傷つくことを避けることは出来ないでしょう。
だからといって、なあなあで何の“決断”もせずに生きていくことは、むしろお互いにとって最悪な結末へと進んでいくことは間違いなく、やはりどこかで“決断”しなければならなかったわけです。
だから、この“決断”というのは、自分だけのことしか考えていない行動ではないし、その“決断”に至るまでにはかなりの勇気が必要だったし、そのために自分自身が傷つきもしたと思うのですよね。
そしてもう一方も、その自身にとっては辛過ぎる“決断”を受け入れるという“決断”を選んだことからも、今は最悪な精神状態にあるとは思いますが、その後はその人自身の人生をしっかりと前を向いて地に足を付け進んでいけると思うし、幸せな人生を歩んでゆけるに違いありません。ってかそうであってほしいですよね。
というような感じで、自分としてはこのようにこの作品に対してけじめを付けてみたのですが、まだこの作品を読んでいない人のために曖昧な表現しか出来なかったので、あんまり上手く伝わらないかもしれません。
まあでも、自分自身でけじめを付けられた、ってことで満足しています。
> 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆
本格ミステリ度 : ★ 鬼畜グログロ度 : ★
ビックリ驚愕度 : ★★★★★ おどろおどろ度 : ★★
熱アクション度 : ★★ 主キャラ魅力度 : ★★★
恋愛ラブラブ度 : ★★★★ 人間味ドラマ度 : ★★★★★
下ネタエッチ度 : ★★★★ 感涙ウルウル度 : ★★★★
衝撃バカミス度 : ★★ 読み終り爽快度 : ★
* <個人的評価&項目別評価>の説明はこちら!
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