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2008年2月

2008年2月29日 (金)

『離れた家』 山沢晴雄 > 「このミス」完全読破 No.63

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.63

 『離れた家』 山沢晴雄

   「このミス」2008年版 : 6位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 4位
               「本格ミステリ・ベスト10」 5位

   読始:2007.12.26 ~ 読終:2008.01.07

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 単行本 <2007年6月>

離れた家―山沢晴雄傑作集 日下三蔵セレクション離れた家―山沢晴雄傑作集 日下三蔵セレクション
日下 三蔵

日本評論社 2007-06
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 本来ならNo.62「痙攣的」鳥飼否宇の順番なのですが、ちょっと訳ありで一つ飛ばしまして、この作品からご紹介。


 この作者は、投稿作が雑誌に掲載された1951年にデビューとなったものの、あくまでアマチュア作家で居続けたため、単独作家としての単行本発売は今作が初となります。

 それまでは、掲載雑誌やアンソロジー本を古書店などで漁らなければ読むことができなかったようなので、そうやって読んでいた人達にはこの単行本刊行はなんとも感慨深いものだったそうです。

 そしてこの作家の評判としては、とにかく“難解”であると。ミステリ作家や評論家をもってしても“難解”であると。この作品を紹介するどの雑誌を見てもこの“難解”という文字は当たり前のように記されていました。

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 それでいよいよこの“難解”と評判の作品を読んでみました。

 探偵・砧順之介シリーズ4編から成る第一部、ノンシリーズ6編から成る第ニ部、そして表題作の中篇「離れた家」の第三部と、大きく分けて三部構成となっているのですが、どの作品も“謎解きトリック”を主題としているため、他の小説にあるような“物語の背景”や“人物描写”などは極力抑えて書かれていました。

 その分“謎解きトリック”の部分が綿密にじっくりと書かれているのですが、これが意外と面白かったですね。特に表題作「離れた家」なんかは、謎解きトリックがまるで精密機械のようで、いくつもの細かな部品が複雑に絡みあい、そのうち一つがズレただけで全てがバラバラになってしまいそうな中、キッチリと絡み合って動いているようで、なんか“芸術作品”って感じで驚きながら読んでしまいましたね。

 ただ確かに“難解”であることは確かで、一編一編をじっくりと集中して読まなければ全く理解できないし、“「離れた家」の謎解きトリックを説明せよ”と問われても、見当違いな答えしか出てこないかもしれません。でも、この“難解な作品”に挑んでいくこと自体が面白かったということもありますからね。これは、読む前に評判を聞いて覚悟していたからこそなのかもしれませんが。

 とまあやっぱりこの作品の謎解きトリックは“難解”であるとは思いますが、この作品自体を楽しむことはそれほど“難解”ではないでしょう。

 読む度に新たな発見が出来ると思うし、ハマる人はとことんハマりそうですね。自分もかなりハマりまってしまいました。第二弾の刊行が今から楽しみです。
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  > 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 「Q&A」 恩田陸

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2008年2月25日 (月)

<JC1巻買い> 「初恋限定。-ハツコイ リミテッド-」 河下水希

初恋限定。 1 (1) (ジャンプコミックス)初恋限定。 1 (1) (ジャンプコミックス)
河下 水希

集英社 2008-02-04
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 今月に発売されたJC(ジャンプコミックス)1巻は、「初恋限定。-ハツコイ リミテッド-」

 人気作「いちご100%」の作者の新連載なのですが、表紙の絵を見てわかるように、とても買い辛かったですねェ。“JC1巻買い”をしていなかったら間違いなく買っていなかったであろうタイプの漫画です。


 毎回主人公が変わっていくオムニバス方式なのですが、前回主人公だった人物が次は脇役に回って....の繰り返しという、映画「パルプ・フィクション」や小説「半落ち」なんかでも見られる凝った作りになっています。

 そんな感じで登場人物達の恋模様が描かれているのですが、ほとんどが“初恋”なため、そのウブさが週刊少年ジャンプ的にはとてもあってるんじゃないですかね。


 そしてその恋というのが、同級生や先輩後輩や幼馴染や兄妹などの間で複雑に絡み合っていくのですが、その“全員が主人公”的な描き方になっていることもあり、顔と名前が全然憶えられないんですよねェ。

 一応ジャンプ本誌は全作品に目を通しているので、この漫画も毎回読んでいるのですが、まず話の最初で“この人はどんなポジションの人だったっけ?”って引っかかってしまうのです。色黒だったりいつも飴を舐めてたりと見た目に特徴があればまだいいのですが、名前だけ出て来たりしたらもうさっぱりです。

 もともと実生活でも顔や名前を憶えるのが苦手なんで、これはかなりの試練ですね。単行本だったら大丈夫かと思って読んでみましたが、それでもやっぱり大変でした。

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 単行本ならではの特典は、まずは帯には表裏両面共にこの漫画の説明で、裏の方には「いちご100%」の宣伝もあります。

 カバーを取った部分は、カバー背表紙のキャラ絵が大きく描かれています。そしてカバーを取った部分の背表紙が結構面白くて、基本はカバー背表紙と同じなのですが、なぜかキャラ絵の部分だけなにも描かれていません。これは“主人公は1人じゃない”ってことを表しているのでしょうか?

 中身の方は、各話の後に、タイトルロゴと、その話で主人公だったキャラの4頭身絵が描かれています。

 あと巻末には、下着を付け忘れて学校に来てしまった女子中学生が主人公の描き下ろし短編「限定少女。」が収録されています。中学生の頃だったら喜んで読んでたかもしれないけれど、さすがに大人になった今こういうのを読んでも、どう反応してよいのやら.....。

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 【「河下水希」関連記事】

  > 「いちご100% EAST SIDE STORY」 河下水希
     > ジャンプGIGA2017 新連載! (17.3.27)

  > 「僕らは雑には学ばない」 西尾維新 河下水希 > 週刊少年ジャンプ読切! (14.12.15)

  > 「てとくち」 大崎知仁 河下水希 > 週刊少年ジャンプ読切! (13.4.26)

  > 「アタシのアイドル」(ジャンプNEXT! 2010SPRING) (10.5.1)
  > 「ボクのアイドル」 河下水希 > 週刊少年ジャンプ読切! (10.4.26)

  > 「あねどきっ」 河下水希 <JC1巻買い> (09.12.5)
  > 「あねどきっ」 河下水希 > 週刊少年ジャンプ新連載! (09.7.6)

  > 「初恋限定。-ハツコイ リミテッド-」 河下水希 <JC1巻買い> (08.2.25)


 >>> 「週刊少年ジャンプ」関連記事リスト <<<

2008年2月23日 (土)

『月光ゲーム Yの悲劇’88』 有栖川有栖 > 「このミス」完全読破 No.61

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.61

 『月光ゲーム』 有栖川有栖

   「このミス」1989年 : 17位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読始:2007.12.21 ~ 読終:2007.12.23

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 文庫本 <1994年7月>

月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)
有栖川 有栖

東京創元社 1994-07
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 「このミス2008年版」の3位に入ったNo.93「女王国の城」は、“学生アリス”シリーズとしては4作目となり、しかも前作からは15年ぶりという、待ちに待った中での発売となった作品とのことです。

 ただ自分はミステリ読み始めて2年にも満たないため、もちろん前3作はまったく読んでいなくて、この“15年ぶりに発売された”という凄さは全くわからないのです。

 それで図書館で予約したものの、自分の番に回ってくるのはまだまだ先になりそうなこともあり、その間に前3作を読んでしまい、“15年ぶりの新作”の嬉しさを少しでも味わおうと思ったのです。

 なのでまずは、シリーズ第1作であり、作者の記念すべきデビュー作でもあるこの本から読んでみることにしました。

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 そしたらこれが本格的な推理小説なのでした。

 その場で初対面となったいくつかの学生グループが、外界との繋がりを断たれた空間に閉じ込められ、そしてそこで連続殺人事件が起きて......。ってな感じで、漫画「金田一少年の事件簿」でありそうなタイプのものなんですが、これまで読んできた中でここまで直球な推理小説は初めてだったこともあり、なかなか楽しく読めましたね。

 そして物語も佳境に入ったところで、「読者への挑戦」なるものが出てきます。これから探偵役の人物が真犯人とそこに至るまでの推理をみんなの前で発表するのですが、その人物が答えに至るまでの推理に使った材料というのは、読者である自分たちにも隠さず披露されているのです。

 なので推理を働かせれば犯人を突き止めることができるわけですが、自分には全然わかりませんでしたね。でも推理を読んだら「なるほど!!」と感心してしまいました。こうやって自分で推理しながら読んでくのも、なかなか楽しいもんです。

 このシリーズは全て「読者への挑戦」形式のようなので、残り3作のうち一つでもドンピシャの推理を働かせてみたいもんですけどね。まあ自分には無理でしょうかねェ。でもその方が最後に驚けるだろうから、それでもいいか。


  > 個人的評価 : ★★★☆☆ ☆☆☆☆☆


  【 “有栖川有栖” 関連記事 】

  > No.959 「狩人の悪夢」
  > No.853 「鍵の掛かった男」

  > No.727 「江神二郎の洞察」
  > No.677 「論理爆弾」
  > No.503 「真夜中の探偵」
  > No.422 「長い廊下がある家」
  > No.355 「闇の喇叭」

  > No.216 「赤い月、廃駅の上に」
  > No.093 「女王国の城」
  > No.081 「双頭の悪魔」
  > No.067 「孤島パズル」
  > No.061 「月光ゲーム」


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 「痙攣的」 鳥飼否宇

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2008年2月20日 (水)

『夕陽はかえる』 霞流一 > 「このミス」完全読破 No.60

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.60

 『夕陽はかえる』 霞流一

   「このミス」2008年版 : 9位

   受賞(候補) : (「世界バカミス☆アワード」最終候補/4位)

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 8位

   読始:2007.12.18 ~ 読終:2007.12.21

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 単行本 <2007年10月>

夕陽はかえる (ハヤカワ・ミステリワールド)夕陽はかえる (ハヤカワ・ミステリワールド)
小塚 麻衣子 影山 徹

早川書房 2007-10-05
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 「このミス2008年版」の結果をみて一番驚いたのは、“バカミス”界の2大巨頭の一人・霞流一の作品がトップ10に入っていたこと。そしてこの本を実際に手にとってみたら、この作者の作品にしてはかなり分厚い代物だったので、これまた驚きました。


 それで内容の方は、とにかく出てくる人物がみな殺し屋で、被害者も容疑者も仲間も敵も探偵役も、皆殺し屋、という凄いものです。なんかこう書くと、出てくる人物が皆“生きる屍”だったNo.51「生ける屍の死」山口雅也の殺し屋ヴァージョンって感じもしますね。

 そしてその殺し屋たちというのが、医者にパン屋に相撲取りにと表向きの職業がそれぞれあるのですが、その表向きの職業において使用する道具を改良し、殺し用の秘密兵器として使用しているのです。

 これによって各キャラが際立ってくるし、しかもその武器というのがバカバカしいながらも強力なので、ここら辺は“さすがバカミスの巨頭だな~”って感じで面白かったです。ロベルト・ロドリゲスや三池崇史あたりの監督で実写化してほしいところですねェ。

 そんな個性出しまくりの殺し屋たちが1対1の対決を行ったりするのですが、それぞれが自分の特徴的な武器や肉体を屈指し、相手の攻撃をかわしつつ攻撃する様は、肉弾戦でもありながら頭脳戦でもあり、それでいてバカバカしくもあるので、これがなんとも楽しかったですね。どことなく「ジョジョの奇妙な冒険」のスタンドバトル的な面白さもあったし。

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 そういった殺し屋たちが繰り広げるアクションシーンを全般にわたって散りばめつつ、そこに不可能犯罪があったり、密室トリックがあったり、犯人推理があったりと、本格的なミステリも満載なので、いろんな要素のゴッタ煮って感じですね。

 殺し屋の専門用語や「サンマラポッチン!」とかの細かいネタもバカバカしくて面白いし、それでいてミステリ小説としても充分読ませてくれるので、もうホントに贅沢な一品です。

 これは続編を切に願いたいですね。また強烈なキャラクター達が暴れまくる世界を味わいたいものです。
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  > 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆


  【 “霞流一” 関連記事 】

  > No.671 「落日のコンドル」

  > No.393 「災転(サイコロ)」
  > No.197 「ロング・ドッグ・バイ」
  > No.107 「死写室」
  > No.060 「夕陽はかえる」
  > No.017 「スティームタイガーの死走」


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 「月光ゲーム」 有栖川有栖

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2008年2月17日 (日)

『贄の夜会』 香納諒一 > 「このミス」完全読破 No.59

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.59

 『贄の夜会』 香納諒一

   「このミス」2007年版 : 7位

   受賞(候補) :

   総合ランキング : 「この警察小説がすごい! ALL THE BEST」 15位

   年度ランキング :

   読始:2007.11.25 ~ 読終:2007.12.14

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 単行本 <2006年5月>

贄の夜会〈上〉 (文春文庫)贄の夜会〈上〉 (文春文庫)
香納 諒一

文藝春秋 2009-05-08
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 最近はそんなに分厚い本を読んでいなかったのですが、この作品はそれなりに分厚いうえに二段組になっているので、読んでも読んでも一向にページが進んでいる気がしませんでしたね(注:ハードカバー本で読みました)。

 でも、分厚いのはページ数だけではなくて、内容の方もそれに比例するかのように、濃密で厚みのある世界が広がっていました。

 それに、後半に入ったら物凄く先が知りたくなっちゃって、ページをめくるのが早くなり、あっという間に読み終えてしまいましたから。

 だけど、さすがにページ数が多いため一気にラストまで読むことができなかったので、読むのを中断するタイミングが難しかったです。次の区切りが来たら止めよう、と思うんだけど、区切りに来たら先が知りたくなって、ついつい読み進めてしまって......。というのの繰り返しで。なのでこれを読んでた頃は寝不足気味でしたねェ。

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 内容の方ですが、簡単に言うと、ある事件の犯人を、刑事と暗殺者がそれぞれ追いかけるストーリーです。

 刑事のパートでは、仲間との職業的友情や警察内部での対立、そして犯人逮捕へ向けた執念の捜査など、今流行りの“警察小説”として楽しめます。そして暗殺者のパートでは、裏社会に生きる男たちのドロドロとした抗争や激しいアクションシーンなど、“犯罪小説”として楽しめるのです。

 さらには、この両者が別々に探りながら追いかける“ある事件の犯人”の正体は一体誰なのか?これが作品全体を通しての謎となっているので、犯人当ての“推理小説”としても充分楽しめるのですねェ。

 その他にも、ちょっと残酷な描写が出てくる“拷問小説”としてや、心のすれ違いが切ない“恋愛小説”的な部分もあったりで、一冊で何冊分もの要素を楽しむことができる、なんとも贅沢な作品です。

 それだけの要素が詰め込まれていながらも、作品全体の軸にブレはなく、まとまりをもったままラストまで突き進むのですから、ホントに凄い作品した。


  > 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆


  【 “香納諒一” 関連記事 】

  > No.1027 「完全犯罪の死角 刑事花房京子」
  > No.0819 「刑事群像」
  > No.0750 「無縁旅人」
  > No.0639 「幸 SACHI」

  > No.0504 「心に雹の降りしきる」
  > No.0371 「熱愛」
  > No.0309 「虚国(蒼ざめた眠り)」
  > No.0108 「ステップ」
  > No.0059 「贄の夜会」


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 「夕陽はかえる」 霞流一

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2008年2月15日 (金)

「Baby cruising Love / Perfume」 & 「Jasper / 木村カエラ」

Baby cruising Love/マカロニBaby cruising Love/マカロニ
Perfume

Tokuma Japan Communications =music= 2008-01-16
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 capsule rmx / capsule (CD)で「今度はもっとちゃんとした歌モノも聴いてみたい」と書いた数日後、CD屋の前を通りかかったら、明かに中田ヤスタカ氏による作品であろう“ちゃんとした歌モノ”が流れていました。

 “そうそうこういうのが聴きたかったんだよ~”と思いつつ、これは一体誰の歌なのか気になったのですが、なんてこたぁ~ない、Perfumeの新曲だったんですねェ。


 今回のシングル曲「Baby cruising Love」は、前作「ポリリズム」と比べるとインパクトはあんまりないし癖もあんまりない感じ。でもこの手の音楽の場合は、そんな“あっさり風味”の方が自分的には好物なんですよね。音も派手ではないけどしっかりツボを突いてくるし。

 ただ聴いてて、せっかく3人組なんだから、ヴォーカルにそれぞれの個性が出るようになればもっと良くなるんじゃないかな~って思いましたね。

 PVや歌っている姿はあんまり観てないし、それ以外となったらほとんど知らないので(「みなさん」のモジモジくんで一度観たくらい?)、それぞれがどんな人なのかはわからないのですが、とりあえず歌に関しては、“3人ヴォーカル”の利点を最大限に活かして、それぞれの個性を上手く組み合わせていった方が面白くなるんじゃないかなぁ、と。

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 そして、そんなPerfumeを早くから気に入って、自分のラジオ番組にゲストとして呼んだりもしていた木村カエラが、その影響をモロに受けて作ったじゃないかな~って感じの新曲が、「Jasper」です。

 まあ正確に言えば“モロに電気グルーヴ”なんですけどね。曲を作ったのが石野卓球氏なんであたりまえなんですけど。そして電気グルーヴ好きの自分がこの歌を気に入るのも必然というものですね。

 テクノポップな曲なんであんまり木村カエラっぽくないのですが、ただどう聴いても木村カエラでしかないのです。音だけ聴けば電気グルーヴなんだけど、“電気グルーヴの曲に木村カエラがお呼ばれしてます”感はなくて、しっかり“木村カエラの歌”にしている印象です。それだけ個性が強くて“変わりのいない”ヴォーカルってことですね。


 それで思ったんですが、Perfumeの場合はあの無機質的なヴォーカルだからこそ良いのかもしれないですね。それぞれが無個性のようでも、その分“3人で1つの歌声”を作り出すことができるわけで、それこそがPerfumeの個性なのでしょう。

 だから、3人のヴォーカルがそれぞれ今後どのように変わっていくのか楽しみですが、変わらなくてもそれはそれでいいかな、って感じですかね。


JasperJasper
木村カエラ

Colombia Music Entertainment =music= 2008-02-06
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 【 「Perfume」 関連記事】

  > 「love the world / Perfume」 & 「爪爪爪 / マキシマム ザ ホルモン」 (08.8.2)
  > 「Baby cruising Love / Perfume」 & 「Jasper / 木村カエラ」 (08.2.15)


 【 「木村カエラ」 関連記事】

  > BANZAI / 木村カエラ (CD) (09.6.6)
  > 「Baby cruising Love / Perfume」 & 「Jasper / 木村カエラ」 (08.2.15)

2008年2月13日 (水)

『片眼の猿』 道尾秀介 > 「このミス」完全読破 No.58

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.58

 『片眼の猿』 道尾秀介

   「このミス」2008年版 : 19位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「ミステリが読みたい!」 13位
              「本格ミステリ・ベスト10」 20位

   読始:2007.12.05 ~ 読終:2007.12.07

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 単行本 <2007年2月>

片眼の猿―One-eyed monkeys (新潮文庫 み 40-2)片眼の猿―One-eyed monkeys (新潮文庫 み 40-2)
道尾 秀介

新潮社 2009-06-27
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 本の帯に「著者の企みを100パーセント見抜くのは不可能!」ってな感じの挑発的な煽り文が書かれていたこともあって、期待値大で読んでみました。

 それで最後には予想外の事実のオンパレードで、驚きの連続となったわけですが、ただそれに対して心にグッと来るものがあったかというと、あまり感じられなかったんですよね......。

 最後における“驚きの事実、怒涛の発表!”にしても、登場人物が話しているというよりも、作者自信が“実はこんなトリックだったんですよ~”と自慢気に語っているような錯覚に陥っちゃうのです。いかにも作られたような感じが浮き上がってしまって。

 そうなると、その謎の正体に込められた人生訓のようなものも、素晴らしいテーマだとは思うんだけど、取って付けたようにしか感じらなくなってしまって........。

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 “ミステリ初心者”として1年10ヶ月ほど様々なミステリ&エンターテインメント本を読んできましたが、その中に「本格ミステリ」というジャンルがあります(この「本格」という言葉の意味は、最近になってやっと理解できるようになってきました。ただまだ漠然としたもので自信ないのですが、今でも評論家や作家が“本格か否か”で長い時間をかけて論争しているくらいなんで、正確な答えはないようですね)。

 その「本格ミステリ」というのは、張り巡らされた伏線を見事に回収したり、事実判明であっと驚くサプライズが用意されていたり、犯人探しなどの、いわゆる“謎解き”がメインになっているミステリ作品のことである、と今の段階では思っているのですが、そういった本格物を読んでも、最後にそれまでの世界観が一変するようなトリック、または謎解きと別の部分(作品の設定や物語の背景、ストーリーなど)が個人的な評価対象になっていて、肝心の謎解き部分に対しては、特別に思うことはそんなになかったのです。

 ところが、最近読んだNo.51「生ける屍の死」山口雅也No.55「首無の如き祟るもの」三津田信三では単純に謎解きの部分が凄い面白くて★5つの評価だったし、一方でこの作品のように謎解きの部分(または謎解きに関すること)に対して不満を感じたりもするようになったんですよね。

 こういった今まで横一線に思っていた部分にも自分の好みや評価基準なんかが出てきたってことは、自分も少しは「ミステリ読み」として成長できてるってことかな?なんて思ったりしてしまいました。


 とまあ自分としては珍しくマイナスな感想ばかり書いてしまい、しかも初の★1つ評価となってしまいましたが、限りなく★2つに近い★1つ評価だし(ここらで★1つ評価を出しとかないと、5段階評価にした意味はないな、ってことで)、不満に思った以外の部分は十分に楽しめましたからね。帯の文句で必要以上に期待しすぎたのかもしれません。

(後日追記)
 この記事を書いていた時は★5段階評価でしたが、その後に★10段階評価に変更しました。


  > 個人的評価 : ★☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆


  【 “道尾秀介” 関連記事 】

  > No.0947 「いけない」
  > No.1042 「スケルトン・キー」(後日更新予定)

  > No.0983 「満月の泥枕」(後日更新予定)
  > No.0947 「サーモン・キャッチャー the Novel」
  > No.0910 「スタフ staph」(後日更新予定)
  > No.0827 「透明カメレオン」
  > No.0749 「貘の檻」

  > No.0682 「鏡の花」
  > No.0617 「笑うハーレキン」
  > No.0583 「ノエル -a story of stories-」
  > No.0546 「光」
  > No.0498 「水の柩」

  > No.0432 「カササギたちの四季」
  > No.0396 「月と蟹」
  > No.0340 「月の恋人~Moon Lovers~」
  > No.0312 「蝦蟇倉市事件 1」
  > No.0311 「光媒の花」

  > No.0294 「球体の蛇」
  > No.0233 「花と流れ星」
  > No.0186 「龍神の雨」
  > No.0169 「鬼の跫音」
  > No.0121 「ラットマン」

  > No.0117 「カラスの親指」
  > No.0097 「ソロモンの犬」
  > No.0058 「片眼の猿」
  > No.0049 「シャドウ」
  > No.0041 「向日葵の咲かない夏」


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 「贄の夜会」 香納諒一

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2008年2月12日 (火)

もっとすごい!!『このミステリーがすごい!』

もっとすごい! このミステリーがすごい! (別冊宝島 1503 カルチャー&スポーツ)もっとすごい! このミステリーがすごい! (別冊宝島 1503 カルチャー&スポーツ)

宝島社 2008-02-07
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 最近は自分の身の回り(というか興味を持っているもの)に20周年を迎えるものがホントに多いのですが、”「このミス」完全読破”にて大変お世話になっている「このミステリーがすごい!」(通称「このミス」)も、今年で20周年を迎えることとなりました。

 それを記念しまして、“「このミス」20年史”ともいうべき本が発売されたのです。

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 まず目玉となる企画が、1988年~2008年版の過去20年でもっとも面白かったミステリー&エンターテインメントを選ぶという「ベストオブベスト」の発表。

 ベストなんだから過去の1位作品がずらりと並びそうな感じもしますが、やはり年月が経つとその評価も変わっていくからか、上位3作は1位ではなかった作品が選ばれました(後日追記 : 改めて見直してみたら、同点3位のうち1つが1位作品でした)。それに過去の1位作品は、ベスト10の中に3作品、ベスト20でも5作品しか入っていないんですからね。面白いもんです。


 あと、やっぱりこういった企画だと最近の作品は入りにくいようで、1998年版にて行われた“「このミス」が選ぶ過去10年のベスト20”とほぼ変わりない面子となってしまってます。

 なので、“20年ベスト”の他に、“1999年版~2008年版の10年ベスト”も集計してほしかったですねェ。自分が読んでいるのはこの期間のものが多いので、この結果の方が気になっちゃいそうな感じ。

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 そしてそれぞれの年毎の解説も魅力なのですが、やはり“歴代1位作家インタビュー”が凄いですね。これだけの面子が欠席者なしで並べられているのは、ただただ圧巻です(桐野夏生と東野圭吾はメールインタビューですが)。

 その中でも特に、かつての名物企画「覆面座談会」にて物議を醸し出すほどにネタにされていた高村薫のインタビューが面白いですね。本人は「覆面座談会」どころか「このミス」自体も読んでなかったそうですが、当時問題にされていた“ミステリに対する意識”に関して今の言葉で語っているのもなかなか興味深いです。

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 というわけで”「このミス」完全読破”を始めて2年で70冊の本を読んできたわけですが、その中で今回の“20年のベスト20”に入ったのは5作品のみ。つまりは、それほど評価されている作品が読んでない中にまだまだあるってことですからね。

 これはもう、これからどんな面白い作品と出会ってゆけるのか、楽しみになってしまいます。

 ちなみに、”「このミス」完全読破”で100冊を突破した際には、個人的なベスト20を作ってみたいと思っています。あと“驚いた!”や“泣けた!”などテーマごとにベスト5なんかもやってみると楽しそうですねェ。

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2008年2月10日 (日)

『隠蔽捜査』 今野敏 > 「このミス」完全読破 No.57

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.57

 『隠蔽捜査』 今野敏

   「このミス」2006年版 : 20位

   受賞(候補) : 「吉川英治文学新人賞」受賞
            (「日本推理作家協会賞」候補)

   総合ランキング : 「この警察小説がすごい! ALL THE BEST」 5位
              「SUGOI JAPAN Award 2015」 ノミネート

   年度ランキング :

   読始:2007.11.30 ~ 読終:2007.12.05

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 単行本 <2005年9月>

隠蔽捜査 (新潮文庫 こ 42-3)隠蔽捜査 (新潮文庫 こ 42-3)
今野 敏

新潮社 2008-01-29
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 「このミス2008年版」が出る前に、どんな本がランキング上位に入りそうか調べていたら、この作品の続編No.72「果断 隠蔽捜査2」の評判が大変よろしかったので、まずは第1作となるこの作品から読んでみました。


 タイトルからわかるように、最近流行りの警察小説です。

 主人公は、いわゆるキャリアの中でもかなりのお偉いさん。そして、エリートである自分を誇り、自分たちキャリアが日本をコントロールしているんだと、自分たちは選ばれた人間で普通の国民ではないと、公言してはばからないような人なのです。

 こう書くと、「踊る大捜査線」なんかでいかにもな悪役として出てきそうな感じに思われますが、キャリアであることを鼻にかけて偉そうにしているわけではなくて、選ばれた人間だからこそ、それこそ命をかけて職務をまっとうしなければならない、という正義の信念を心に抱き、常にそれに従って行動する人なのです。

 それで読んでいて“誰かに似てるな~”と思っていたのですが、なんとなく漫画「天才柳沢教授の生活」の柳沢教授に似た感じなんですよね。まあ、柳沢教授が“自分が理解できないことに対して、積極的に理解しようと努める”のに対し、この主人公は“自分が理解できないことに対して、理解しようとするそぶりも見せない”という違いはありますが。

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 そして物語の中では、警察全体を揺るがすほどの事件が起きます。それと時を同じくして、主人公の身内にも人生を大きく狂わすような重大な出来事が起きます。

 そうなったらやっぱり“この先どんな展開になっていくのか?”って気になっていくわけですが、でもそれよりも、“この2つの大きな出来事を前にして、主人公が性格的にどのように変わっていくのか?”って方が気になるんですよね。それだけ、この主人公の強い信念が揺らいでしまうほどの、大きな事件だったわけです。

 それでどのように変わったかというと.......。まあこれはネタばれになってしまうので書きませんけど。


 それにしても、この作品自体もかなり面白かったのに、続編は今作の20位から一気に4位へと大幅にジャンプアップするほどの評価なんですよね。これはもう読むのがホントに楽しみなんですが、でも今作をラストまで読んでみれば、続編が面白くならないわけがない、ってことはわかっちゃうんですけどね。

 なので、とにかく「果断」を読むならば、まずは今作を先に読むべきです。そして今作を読めば、必ずや続編の「果断」を読まずにはいられなくなるでしょう。


  > 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆


  【 “今野敏” 関連記事 】

  > No.1003 「棲月 隠蔽捜査7」
  > No.0914 「去就 隠蔽捜査6」
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  > No.0661 「宰領 隠蔽捜査5」
  > No.0626 「欠落」
  > No.0587 「確証」
  > No.0486 「転迷 隠蔽捜査4」
  > No.0346 「初陣 隠蔽捜査3.5」

  > No.0302 「天網 TOKAGE2 特殊遊撃捜査隊」
  > No.0232 「同期」
  > No.0188 「疑心 隠蔽捜査3」
  > No.0072 「果断 隠蔽捜査2」
  > No.0057 「隠蔽捜査」


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 「片眼の猿」 道尾秀介

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2008年2月 9日 (土)

〔洋楽2008〕 TURNING DRAGON / CLARK

ターニング・ドラゴンターニング・ドラゴン
クラーク

Beatink 2008-01-23
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 “クラブミュージック&ロック”と言われる音楽を最初に聴いたのは、The Chemical Brothersの「setting sun」でした(場所も憶えてて、今は無き東急ハンズ藤沢店の横にあったCD屋(こちらもいつのまにか無くなってました))。

 この歌を聴いて、そのあまりの攻撃性、あまりの破壊力に、かなりの衝撃を受けたものです.....。

 そして今、あの時と同じくらいの衝撃を受けたのが、このアルバムなのです!(今回は曲ではなくてアルバム全体の紹介となっています)。


 やっぱり攻撃性や破壊力は凄まじいものがあるのですが、そのタイプは「setting sun」とはちょっと違いますね。

 例えるならば、映画「プライベート・ライアン」のオープニング場面のような感じ。

 これは戦争映画で、冒頭に海岸線での戦闘シーンが数十分にも渡って繰り広げられるのですが、その撮り方がとても素晴らしくて、まるで自分がその戦場にいるかのように感じられるのです。敵が撃った弾がスクリーンから飛び出てくるような迫力で、思わず反射的に顔を伏せてしまいそうになったくらいですからね(なのでこれは映画館で見てこその映画なのです)。

 それと同じような感じで、このアルバムを聴いていると“音の弾丸”が自分に向かって飛んでくるような迫力がありますね。まさに戦場にいるかのよう。かなり強烈です。

 そしてその弾丸は、見事に命中してしまったようです。その結果、自分はこのアルバムの“捕らわれの身”となってしまいました。


   一般的お薦め度 > ★
   変歌好お薦め度 > ★★★★
   個人的ハマリ度 > ★★★★★

2008年2月 7日 (木)

「テガミバチ」(3) 浅田弘幸

テガミバチ 3 (3) (ジャンプコミックス)テガミバチ 3 (3) (ジャンプコミックス)
浅田 弘幸

集英社 2008-02-04
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 この作者の漫画はデビュー作の第1話が雑誌に掲載された時(その時の件は「浅田弘幸の漫画(「テガミバチ」)が週刊少年ジャンプに載る日が来るとは....」参照)からずっと読んでいて、いまだに“あさだひろゆき”という平仮名での名前の方がしっくりくるくらいなのですが、ここにきてこんだけ感動できて面白い作品を読ませてもらえるとは思いませんでしたね。

 どっちかというとこの人のギャグが好きで読み始めたのですが(ってかデビュー作「BADだね!ヨシオくん」はそのほとんどがギャグで出来ているのですが)、漫画が変わるごとに作中におけるギャグの占める割合が減っていって、今作に至ってはあとがき漫画もなくなってしまって、そこが非常に残念なのですが、それでも不満を感じないぐらいに作品の中身が素晴らしいですからね。

 ってなことをこの3巻を読んでふと思いました。


 現在は話題の雑誌「ジャンプスクエア」で連載しているのですが、この巻では、今はなき月刊少年ジャンプ掲載分3話と、“月刊少年ジャンプ廃刊 → ジャンプスクエア創刊”のインターバルを利用して、顔見せ的に週刊少年ジャンプに掲載された記念すべき特別編(これも「浅田弘幸の漫画(「テガミバチ」)が週刊少年ジャンプに載る日が来るとは....」参照)が収録されています。

 この週刊少年ジャンプに載った特別編がなんとも素晴らしい作品なのです。前にも書きましたが。

 だから、ぜひとも多くの人に読んでもらいたいですね。

 それでこの漫画&作者のファンになってもらって、「BADだね!ヨシオくん」にまで遡ってもらうと。そしたらそのギャップに卒倒してしまうんじゃないですかね。自分はどちらも同じくらい好きですけど。

2008年2月 6日 (水)

『The Book-jojo's bizarre adventure 4th another day-』 乙一 > 「このミス」完全読破 No.56

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.56

 『The Book-jojo's bizarre adventure 4th another day-』 乙一

   「このミス」2009年版 : ランク外

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読始:2007.11.26 ~ 読終:2007.11.30

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2007年11月>

The Book 〜jojo's bizarre adventure 4th another day〜 (集英社文庫 お 46-8)The Book 〜jojo's bizarre adventure 4th another day〜 (集英社文庫 お 46-8)
乙一 荒木 飛呂彦

集英社 2012-11-20
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 まず、この本の発売をどれだけ待ち望んでいたのかはこちら(何年も待ち望んでいた乙一版「ジョジョ」がいよいよ発売!)を、そして購入直後(読む前)の感想はこちら(「ジョジョの奇妙な冒険 “The Book”」 乙一)をご覧ください。

 まあその時に書いたように、読まないといけない他の本がすでに何冊かあったので、これを読むのはしばらく後になるだろうと思ってはいたのですが、やはり何年も発売を待ち望んでいた本が目の前にあるわけで、さすがにそれを放っておくことが出来ず、なんとあの記事を書いた直後には読み始めてしまい、結局そのまま最後まで読破してしまったんですねェ。


 それで内容の方なのですが、原作漫画(ジョジョの奇妙な冒険)に出てきたキャラはどちらかというと脇役的存在で、ストーリーのメインに据えられているのはいずれもオリジナルキャラだという点や、“スタンド”という原作漫画に出てくる特殊能力について親切なくらいに説明が加わっていることから、原作漫画好きだけに向けているのではなく、原作漫画を一度も読んだことのない人でも楽しんで読めるように書かれていますね。

 だからといって“初心者向け”というわけでなく、原作漫画を読んでいるからこそ思わず笑ったり驚いたりすることが出来る小ネタがふんだんに盛り込まれています。

 特に自分は、かの有名な台詞「おまえは今まで食べた食パンの枚数を憶えているのか?」の使い方に思わず笑ってしまいましたね。この場面など、まるでジョジョのパロディがたくさん出てくる漫画「太臓もて王サーガ」を読んでいるような面白さでした。

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 そして前に「この本を読み始めたとして、“20年近く読み続けているジョジョの小説版”として読むのか、“最近好きになった乙一の小説”として読むのか、一体どっちになるんでしょうね」って書いたのですが、これが意外とどちらでもなかったのです。

 上に書いたように、オリジナルなキャラを中心に話が進みながらも、原作のキャラやキーワードが適度に絡んでくるので、“乙一の作品”として読んでいたかと思えば“ジョジョの小説”を読んでいる感じがして、“ジョジョ”かと思えば“乙一”で、そうこうしているうちに、“乙一の作品”でも“ジョジョの小説”でもなく全くの別物、まるで“両者の間から新たに発動したスタンド”のような感じになってきました。

 それだけ、“ジョジョ”と“乙一”の相性の良さ、世界観の一致さが際立っていましたね。だけど単に“ジョジョ”を模写するだけでなく、ミステリ的構造や登場人物の過去のエピソードなども乙一らしさが出ていて、それでいて“ジョジョの世界”を壊さないどころか見事なまでに新たな方法で作り上げているので、まさに“作られるべくして作られた作品”って感じです。

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 あとこの企画って、集英社側が乙一に“ジョジョの小説版”の執筆を依頼したものだと思っていました。なのでこう何年も発売されない状態が続いていたことから、この企画自体なくなってしまったのかな?と。

 そしたら、今作のあとがきや原作者である荒木飛呂彦先生との対談などを読んでみたら、まずデビュー作「夏と花火と私の死体」からしてジョジョの影響を強く受けていて、そのためこの作品を応募したのは「ジャンプ小説大賞」。そしてこの「ジョジョ4部」の小説も、自らが頼み込んで執筆することになった、ということを知って驚きました。

 それで作品がなかなか仕上がらなかったのは“ジョジョへの愛”故のもので、その間収入が途絶えてしまったために合間に他の作品を書いたり(まさかNo.52「銃とチョコレート」なんかも合間の仕事だったとは!)、ってことがわかるにつれて、なんかこっちまで嬉しくなっちゃいましたね。

 そしてそれだけの“ジョジョへの想い”が物凄く伝わってくるほどに、とても素晴らしい作品が生み出されたわけです。

 ぜひとも続編(というか第2弾)もなんとか書いてもらいたいもんですけど、やはりまた5年くらいかかってしまいそうなんで、もうそろそろ取り掛かってほしいな~なんて思っちゃいますねェ。
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  > 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆


  【 “乙一”関連記事 】

  > No.056 「The Book-jojo's bizarre adventure 4th another day-」
  > No.052 「銃とチョコレート」
  > No.009 「GOTH リストカット事件(夜の章、僕の章)」


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 「隠蔽捜査」 今野敏

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2008年2月 2日 (土)

『首無の如き祟るもの』 三津田信三 > 「このミス」完全読破 No.55

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.55

 『首無の如き祟るもの』 三津田信三

   「このミス」2008年版 : 5位

   受賞(候補) : (「日本推理作家協会賞」候補)
            (「本格ミステリ大賞」候補)

   総合ランキング : 「本格ミステリ・ベスト・オブ・ベスト10(1997-2016)」 1位
              「本格ミステリ・オールタイムベストアンケート」 8位
              「東西ミステリーベスト100(2012年版)」 62位

   年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 2位
              「ミステリが読みたい!」 3位
              「週刊文春ミステリーベスト10」 5位
              「黄金の本格ミステリー」 選出

   読始:2007.11.27 ~ 読終:2007.11.28

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2007年4月>

首無の如き祟るもの (講談社文庫)首無の如き祟るもの (講談社文庫)
三津田 信三

講談社 2010-05-14
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 当時「このミス2008年版」はまだ発売前だったのですが、色々情報を調べてみたら“上位ランクイン有力”みたいだったので、「このミス」が発売されて図書館の予約が増えすぎちゃう前に借りて読んでしまいました。


 密室に、アリバイに、遺体(の一部)消失に、犯人当てに、といわゆる本格推理小説なのですが、これまで何冊も読んできて、“最後に世界観がガラリと変わる”ようなタイプは評価が高くなるものの、“謎解き”タイプは面白く読みながらも評価の点では高くならないので、この作品も後者のタイプかな?と読む前は思ってました。

 ところがどっこい。戦中および戦後すぐという時代設定に、東京郊外にある村の筆頭地主である由緒正しい旧家という舞台設定。そこにその旧家で行われる奇怪な行事に、一癖も二癖もある登場人物、さらに古くから伝わる怪談話などが絡んでくるのですが、この世界観がなんとも言えずに良いです。

 最近読んだのは現代の話がほとんどだったこともあって、この作品世界にドップリと浸かってしまいました.......。

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 それから謎解きの部分も凄すぎですね。謎解き話に入る前にこれまでの謎の部分を箇条書きでまとめてくれたのですが(もちろん話の流れの中で)、これなんか謎解き小説初心者の自分なんかには物凄くありがたかったし、それを見て“ホントに全ての謎が解けるのか?”って首を捻っているのをあざ笑うかのように、一つのピースをはめ込むだけで全ての謎を鮮やかなまでに解いてしまったのは驚かされました。

 そして最後の怒涛の展開といい、世界観だけでなく、謎解きとかストーリーとか全ての面でこの作品に嵌ってしまいましたね。途中で読むのが止められなくなって、物凄く久々に明け方まで読みつづけてしまったほどですから。平日だから辛かった......。でも面白かった!!
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  > 個人的評価 : ★★★★★ ★★★☆☆


  【 “三津田信三” 関連記事 】

  > No.777 「ミステリマガジン700 【国内篇】」
  > No.534 「幽女の如き怨むもの」

  > No.487 「生霊の如き重るもの」
  > No.291 「水魑の如き沈むもの」
  > No.255 「密室の如き籠るもの」
  > No.102 「山魔の如き嗤うもの」
  > No.055 「首無の如き祟るもの」


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 
        「The Book~jojo's bizarre adventure 4th another day」 乙一

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2008年2月 1日 (金)

〔洋楽2008〕 Wax Simulacra / THE MARS VOLTA

ゴリアテの混乱~デラックス・エディション(DVD付)ゴリアテの混乱~デラックス・エディション(DVD付)
マーズ・ヴォルタ

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 このバンドの歌は初めて聴いたのですが、もうブットビましたね。なんじゃこりゃ!!って感じで。

 その感覚は、まるで大自然の猛威(台風や地震や洪水や......)を目の前にして、そこに立ち尽くすことしかできないでいるかのようです。

 そんな感覚に陥るほど、聴いている間は自分には成すすべなど何もなく、ただただ音の洪水をモロに受け続けることしかできません。そのくらいに圧倒されました。


 しかもそれが、この1曲だけなのではなくて、アルバム全体を通して勢いが留まることなくこちらに向かい続けてくるのですから、そのパワーたるや人為的なものとはとてもじゃないけど思えませんね。

 ホントに衝撃的でした。


   一般的お薦め度 > ★
   変歌好お薦め度 > ★★★★★
   個人的ハマリ度 > ★★★★★

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