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2006年8月

2006年8月23日 (水)

『毒蟲vs.溝鼠』 新堂冬樹 > 「このミス」完全読破 No.19

このミステリーがすごい!」完全読破 No.19

 『毒蟲vs.溝鼠』 新堂冬樹

   「このミス」2007年版 : ランク外

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読始:? ~ 読終:2006.7.27

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2006年4月>

毒蟲vs.溝鼠 (徳間文庫 し 27-6)毒蟲vs.溝鼠 (徳間文庫 し 27-6)
新堂 冬樹

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 この作品は今年発売ということで、対象となる「このミス」は発売前なのですが、せっかく読んだので一応感想を書いておきます。

 ただ、この作品の元となっている『溝鼠』は、「このミス」の対象作品になっていたものの1票しかはいっていなかったので、この作品も同じ道を歩んでしまえば「“上位作品”完全読破」が偽りの看板となってしまいますが(後日追記:この頃は「上位作品完全読破」と題していました)、まあ別に細かいことには拘らないのでいいでしょう.......。(結局ランク外でした)

 この本が発売された頃には書店に平積みに置かれていたのですが、このタイトルに、モンスター2匹が睨み合っている表紙絵(ハードカバー版のことです → )に、「『完全自殺マニュアル』『バトル・ロワイヤル』を超える有害図書!」ってな感じの煽り文句などが異常に目立ってまして、もう無駄な抵抗なんか考える余地もない位に自然とページをめくってました。

 まあやっぱりこのタイトル&表紙絵から『エイリアンvsプレデター』的なトンデモ系な面白さを想像していたのですが(この映画観てないけど)、もう初っ端から目を背けたくなるような拷問の数々.....。

 “自分の命が一番大事”とはよく言われる言葉だし実際そう思うのですが、そんな命でも喜んで捨たくなっちゃうくらい、“生き地獄”な生活へと送り込まれる拷問の数々ですからね。

 しかもその拷問を受ける人々は“逆恨み”が原因でこんな目にあっている、ってのがもうやるせないですし....。

 だから「こりゃ読まない方がいいや」って本を閉じるのですが、やっぱりその後が気になって続きを見てしまうんですよね.....。それはやっぱり、タイトルが全てを物語っています。

 「毒蟲」と「溝鼠」。この両者、いずれも劣らぬ鬼畜キャラなのですが、「毒蟲」は「溝鼠」から受けた屈辱が元になってこのような鬼畜に変貌を遂げたのです。だからこの両者の対決がいずれ見られるわけですね。

 さらにこの両者の周りにいる仲間たちが、どちらも劣らずのサイコなキャラばかりなので、つまりはこの「毒蟲グループ」と「溝鼠グループ」の対決が、一体どうなってしまうのか怖いもの見たさもあって、ついつい手に取ってしまったのです。

 でもってその期待すべく両グループの対決なんですが、ここまで数々の拷問を読んできていくらか耐性ができて、「さあこれからどんな鬼畜な拷問合戦が待っているんだ!?」と心構えていたものの、ここで期待に反して『エイリアンvsプレデター』的なトンデモ系な流れになってしまったんですよね。

 凄く面白い対戦カードもあるのですが、それ以外がねェ.....。

 特にメインイベントは、期待が大きかった分、「え?ここで3カウント入っちゃうの?」的な物足りなさがありました......。

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 やはりこうしてミステリ作品を立て続けに読んでいると、この作品は、ラストや全体的なストーリーに物足りなさが残ってしまいます。

 ただ、前作『溝鼠』を読んでいなかったこともあってこの作品のタイプがわからないまま読んだのですが、最初から「こういうタイプの小説なんだ」と知っていたら十分楽しめますね。

 細かいことは抜きにして、とにかく勢いやパワーを感じながら楽しく読むべき作品なのでしょう。

 ってかやっぱりとうとう最後まで完読してしまったわけですからね。それだけ自分を引きつけるものが、この作品には確かに存在していました。
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  > 個人的評価 : ★★☆☆☆ ☆☆☆☆☆


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 「セント・メリーのリボン」 稲見一良

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2006年8月22日 (火)

『邪魔』 奥田英朗 > 「このミス」完全読破 No.18

このミステリーがすごい!」完全読破 No.18

 『邪魔』 奥田英朗

   「このミス」2002年版 : 2位

   受賞(候補) : 「大藪春彦賞」受賞
            (「直木三十五賞」候補)

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 6位

   読始:2006.7.18 ~ 読終:2006.7.21

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 文庫本(上・下) <2004年3月>

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奥田 英朗

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 『空中ブランコ』で直木賞を受賞したことで一躍トップ作家の仲間入りとなったわけですが、ミステリ界ではすでにこの作品によって知名度をグンッ!と上げていたのです。

 そういえば以前「KICK OFF F・Marinos」で上野良治選手がこの作者の本を薦めていたのですが、その時に「有名になる以前から読んでいた」と言ってたので、それは前作『最悪』やこの本のことを言ってたんでしょうねェ。

 その時にも「上野選手が薦めるなら読んでみようかな~」とも思っていたわけですが、今頃になってやっと読むことになりました。

 それで内容なんですが、自分が映画やドラマや小説などを見ている時に、最も忌み嫌うパターンのものでした。

 というのは、善良な登場人物に対して、“そっちの方へ進むと状況悪くなっちゃうよ~”とわかっているのに、それを見守ることしかできず、その善良な登場人物は自ら最悪な状況へと次々に足を進めていく.......。というパターンです。このパターンの話を観たり読んだりするのは、強制されない限りは避けて通りたい道ですからね。

 だから今回も、“人気の奥田英朗”ということで物凄く期待して読み始めたものの、次第にそのパターンへと進んでいったので、もう読むの止めたくなっちゃいました。

 でもまあせっかくだから最後まで....、と読み進めていくと、そのドツボにハマってく登場人物は、落ちるところまで落ちたらそこで思いっきり吹っ切れちゃったんですよね。

 今まで精神的に溜めに溜めてきたものが一気に大噴火したみたいで、その切れ方がもう読んでて快感で......。

 最初は“自分が最も忌み嫌うパターン”だったのに、逆にそれが後半のハチャメチャっぷりに快感を覚える起爆剤になっていたんですねェ。

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 あと読んでて気になったのが、なんかストーリーがこれからどこに転がっていくのか予測不能で、すごく不安定に感じたことです。この不安定さが、この作品に非常に効果的に働いていたと思うんですよね。

 そして自分としても、“きっちりとしたストーリー”は凄いな~と感心するものの、こんな“不安定なストーリー”の方が魅力を感じるし、断然こっちの方が好きですね。

 てなことを考えていたら、やはりこの作者は、始めからストーリーを決めてから書くのではなくて、どんな方向にストーリーが進んでいくのか作者自身も楽しみながら書いているそうです。だからこそこの“魅力的な不安定さ”が満ち溢れた作品が出来上がったのですね。

 でもこの作品の自分的な評価といいますと、後半で吹っ切れてからは凄く楽しめたものの、やっぱりそれまでが読んでて辛かったし、それに主人公二人とも可哀想なのにはかわりないので、高くは付けられないんですよねェ......。


  > 個人的評価 : ★★★★☆ ☆☆☆☆☆


  【 “奥田英朗” 関連記事 】

  > No.1088 「罪の轍」

  > No.0798 「ナオミとカナコ」
  > No.0450 「純平、考え直せ」
  > No.0249 「無理」
  > No.0154 「オリンピックの身代金」
  > No.0018 「邪魔」


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 「毒蟲vs.溝鼠」 新堂冬樹

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2006年8月 2日 (水)

『スティームタイガーの死走』 霞流一 > 「このミス」完全読破 No.17

このミステリーがすごい!」完全読破 No.17

 『スティームタイガーの死走』 霞流一

   「このミス」2002年版 : 4位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 21位

   読始:2006.7.12 ~ 読終:2006.7.14

   読んだ時期 : 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 文庫本 <2004年3月>

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 またもや“「このミス」ベスト3”以外の作品を読んでみました。何故にベスト3でないこの作品を読んでみようと思ったかといいますと、この作品が噂の「バカミス」で、しかも4位という大変高い評価を得ていたからなのです。

 「バカミス」というのは、「このミス」誌の後ろの方で毎回特集されているものなのですが、否定的な意味での“馬鹿”ではなくて、むしろ尊敬し敬うべき“バカ”なのです(嫌味な意味ではなくて)。

 この手の物って、映画にしろ漫画にしろ嫌いじゃない、というかむしろ“尊敬すべき対象”としているので、大きな期待を胸に“初「バカミス」を体験してみました。

 でもっていきなり結論を言ってしまいますと、“これが「バカミス」か!!”というような強烈な衝撃とか感動はあまり得ることが出来ませんでしたねェ。

 話自体はとても面白く一気に読めたし、次から次に溢れてくるトリックなんかにも驚かされたのですが、やっぱり“「バカミス」初体験”をあまりに意識し過ぎていたためか、ちょっとした肩透かしをくらったような感じがありました。

 そこで考えたのが、この「バカミス」というジャンルは、そのジャンル自体が独立した世界で生きているわけではないのだ、ということです。やはり「バカミス」とは、“本格的なミステリ作品”に対するアンチテーゼ的役割をもっているもので、“本格的なミステリ作品”が存在することで初めてその魅力というものが発揮されるのではないでしょうか。

 そう考えると、その“本格的なミステリ作品”の読書量が乏しい自分には、今「バカミス」を読んでも、両者を差別化する境界線がぼやけているため、まだ「バカミス」の“アンチテーゼ的面白さ”が伝わってないんでしょうね。

 だから“ミステリ作品”としてはすごく楽しめたのに、“バカミス作品”としてはあまり楽しむことが出来なかったのかもしれません。

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 というわけで、“初「バカミス」体験”を楽しみに読み始めたものの、結局は“もっともっと小説を読まねばならぬのだ”という初心に返るべき訓示を授けられてしまいました。

 まあ今はジャンルなど気にせずに、とにかく“読んで読んで読みまくれ!!”精神で気合入れてミステリ作品を読破してゆきたいですね。

 .......ってこの作品の感想がこんなになるなんて、読む前には全く想像もできませんでしたねェ。
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  > 個人的評価 : ★★☆☆☆ ☆☆☆☆☆


  【 “霞流一” 関連記事 】

  > No.671 「落日のコンドル」

  > No.393 「災転(サイコロ)」
  > No.197 「ロング・ドッグ・バイ」
  > No.107 「死写室」
  > No.060 「夕陽はかえる」
  > No.017 「スティームタイガーの死走」


  NEXT MYSTERY ⇒⇒⇒⇒ 「邪魔」 奥田英朗

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