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カテゴリー「01.「このミス」完全読破(ミステリ小説)」の記事

2018年4月22日 (日)

『分かったで済むなら、名探偵はいらない』 林泰広 > 「このミス」完全読破 No.1010

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1010

 『分かったで済むなら、名探偵はいらない』 林泰広

   「このミス」2019年版 : ?位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読了日 : 2018年3月13日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2017年12月>

分かったで済むなら、名探偵はいらない分かったで済むなら、名探偵はいらない
林 泰広

光文社 2017-12-14
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 林泰広は、1993年から2009年まで光文社文庫から出版されていた公募アンソロジー『本格推理』にて、「二隻の船」(1996年)、「プロ達の夜会」(1998年)、「問う男」(1999年)の3作品が選出&掲載。

 そしてその流れで、2002年に新設された光文社の公募新人賞“KAPPA-ONE登龍門”の第一期として石持浅海、東川篤哉、加賀美雅之と共に選ばれ(第一期だけは公募ではなく『本格推理』に掲載されたアマチュア作家の中から選出)、長篇『The unseen 見えない精霊』を刊行してデビュー。

 しかしその後は雑誌に短篇を発表するくらいだったのですが、デビュー作以来16年ぶりの単行本がついに発売となりました。
 
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 というわけで本作は、「プロローグ」「106は頑張ってる」「バカにすんな!」「Bプランでいこう」「マリコさん、只今後悔中」「ロザラインなんているもんか」「陰謀ジジイの質問タイム」「106は頑張っていた」「エピローグ」から成る連作集です。

 主人公は居酒屋「ロミオとジュリエット」の常連である刑事で、一人で呑みつつ捜査中(または解決済み)の事件の謎について考えたり、あるいは偶然居合わせた客から謎めいた相談を受けたり(謎解きを吹っ掛けられたり)するのですが、主人公がこれらの謎を解くヒントとなるのが、居酒屋の名前にもなっている戯曲「ロミオとジュリエット」なのですね。

 「ロミオとジュリエット」といえば世界的に有名な恋愛悲劇であるものの、主人公が居酒屋内で偶然に耳にしたり聞かされたりするのがそんな「ロミオとジュリエット」の新説でして、それがどんなものかといいますと、主役の二人(ロミオとジュリエット)以外の登場人物にスポットを当てることによりこの戯曲のジャンル自体が(恋愛悲劇から)変わってしまうというものなのです。

 章ごとにスポットを当てる脇役が変わり、その度に物語のイメージもがらりと変わっていくこの新たな解釈の数々を聞いているだけでも楽しいですし、それをヒントにして現実の事件・騒動の謎を解いてしまうのも鮮やかで面白く、しかもどちらも固定観念や先入観、立場によって見え方が変わってくるリアリティーさといったテーマ性が込められた反転劇となっているなど、ミステリ的な読み味もなかなか濃厚なものとなっていました。

 ただ、(あっさりとはしていなくて)結構食い応えあり癖が強めの作風で、謎や真相に分かりやすいインパクトはないため、ライトなユーモアミステリ作品のように見えてしまう単行本の表紙やタイトルの印象とは違って(誰でも楽しめるミステリ作品というよりは)ミステリ玄人向けかな~といった感じもしたので、窓口は広そうではありながら好みが分かれやすいかもしれませんね。


> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  個人的評価の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


 「それまでの明日」原りょう <<< PREV/NEXT >>> 「サハラの薔薇」下村敦史

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

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2018年4月19日 (木)

「このミス2019年版」月別ランクイン候補作品(2018年5月)

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 とうとう10年目となる“月別ランクイン候補作品”ですが、「このミステリーがすごい!2019年版」対象作品についても引き続き実施していこうと思います。

 この“月別ランクイン候補作品”とは、自分は日頃から“どんな作品が「このミス」にランクインしそうかな?”と色々とチェックしているので、どうせならそれを刊行された月(奥付記載の月)別にまとめてしまおう!ということで始めた企画です。

 ここでは、とりあえず「このミス」の対象になりそうな作品をピックアップして、作者やシリーズの「このミス」実績ごとに分けて並べています。

 なお、読んだうえでのランクインするかどうかの予想に関しては、「このミステリーがすごい!2019年版」ランキング(順位)予想の方をご覧ください。


 << この記事は現時点で未完の状態なので、情報を仕入れ次第(&Amazonに作品のページが作られ次第)、新たに対象作品を追加していく予定です(追加情報は「このミス」完全読破 説明&読破本リストの“更新情報”欄に書いていきます) >>

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>> 2018年5月発売の「このミス」ランクイン実績のあるシリーズ作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ
 * シリーズ過去作品の作品名部分のリンク先は、当ブログ感想記事
 * 作者名横のカッコ内は、作者の「このミス」20位以内ランクイン作品数


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>> 2018年5月発売の「このミス」ランクイン実績作家の作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ
 * 作者名横のカッコ内は、「このミス」20位以内ランクイン作品数

 福家警部補の考察 / 大倉崇裕 (3作) * シリーズ5作目
 バットランド / 山田正紀 (2作)
 未来 / 湊かなえ (1作)
 君がいた夏は / 柴田よしき (1作)

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>> 2018年5月発売の「このミス」ランクイン実績なしも
          21~40位に入ったことのある作家の作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ
 * 作者名横のカッコ内は、過去の「このミス」21~40位作品数

 ψの悲劇 The Tragedy of ψ / 森博嗣 <4作> * シリーズ11作目

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>> 2018年5月発売の
    日本推理作家協会賞(推協賞)短編部門の受賞作・候補作
    および年間傑作選アンソロジー選出作を収録した作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ
 * 作者名横のカッコ()内は、「このミス」20位以内ランクイン作品数
 * 作者名横のカッコ<>内は、過去の「このミス」21~40位作品数
   (「このミス」ランクイン作家の場合は省略)
 * 他の項目と重複している作品もあります

[ “” ]


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>> 2018年5月発売のミステリ(エンタメ)系新人賞受賞(候補)作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ

[ “福山ミステリー文学新人賞”受賞 ]
 虚の聖域 梓凪子の調査報告書 / 松嶋智左

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>> 2018年5月発売の
     「このミス」で40位以内に入ったことはないものの
     「本格ミステリ・ベスト10(本)」
     「週刊文春ミステリーベスト10(春)」
     「ミステリが読みたい!(早)」
     にはランクイン経験のある作家の作品 <<

 * 「週刊文春ミステリーベスト10」は
   (「このミス」が始まった)1988年以降のランクイン作家のみ対象
 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ

 鏡じかけの夢 / 秋吉理香子 (本)(春)

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>> 2018年5月発売の「このミス」の候補かもしれない作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ

 タイトルはそこにある / 堀内公太郎
 燃える水 / 河合莞爾
 首の鎖 / 宮西真冬

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>> 2018年5月発売の宝島社作品 <<

 * 「このミス」では集計対象外(「本ミス」「文春」「早ミス」は対象)
 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ

 連続殺人鬼カエル男ふたたび / 中山七里 * シリーズ2作目

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>> Amazonに販売ページが作られる前の主な5月発売予定作品 <<

 * 作者名横の()内は、「このミス」20位以内ランクイン作品数
 * 作者名横の<>内は、過去の「このミス」21~40位作品数
   (ランクイン実績作家の場合は省略)

 爆身 / 大沢在昌 (15作)
 探偵AIのリアル・ディープラーニング / 早坂吝 (1作)

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 NEXT >>> 「このミス2019年版」月別ランクイン候補作品(2018年6月)

 「このミス2019年版」月別ランクイン候補作品(2018年4月) <<< PREV


 「月別ランクイン候補作品」の一覧は、「このミス」完全読破 読破本リストにてご覧ください。


  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2018年3月27日 (火)

『それまでの明日』 原尞(りょう) > 「このミス」完全読破 No.1009

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1009

 『それまでの明日』 原尞(りょう)

   「このミス」2019年版 : ?位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読了日 : 2018年3月3日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2018年3月>

それまでの明日それまでの明日
原 りょう

早川書房 2018-03-01
売り上げランキング : 59

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 No.11「そして夜は甦る」No.135「私が殺した少女」No.260「天使たちの探偵」No.321「さらば長き眠り」No.351「愚か者死すべし」に続く、“探偵沢崎”シリーズの6作目です。

 このシリーズは、1作目の2位(1988年)、2作目の1位(1989年)を始めとしてこれまで発表された5作が全て「このミス」でベスト5入りしていて、「このミスが選ぶ過去10年のベスト20」(1998年版で実施)では2作目が4位、1作目が13位に、「このミス20年のベスト・オブ・ベスト」(2008年に発表)でも2作目が3位、1作目が28位にランクイン。

 さらに1作目は山本周五郎賞候補、2作目は直木賞受賞&ファルコン賞受賞&日本推理作家協会賞候補、3作目は日本冒険小説協会大賞受賞&日本推理作家協会賞候補と、賞レースでもとんでもない実績を持つシリーズですし、著者は小説としてはこのシリーズ作品しか発表していないため、新作を敢行すれば100%の確率で高評価を受けるというとんでもない作家でもあるのです。

 ただ、1988年のデビューから3作目までは1年ごとに新作を発売していたものの、4作目はそれから5年後(1995年)、5作目はまたそこから9年後(2004年)と発売間隔が大きく開き、6作目(本作)も2008年時点で“ほぼ完成している”と著者が発言しながらその後も全く発売される気配はなく、デビューから昨年(2017年)までの29年間で刊行されたのはわずか5作のみという超寡作作家でもあるのですよね。

 そんな実績と寡作さにより、今では“伝説の作家”&“伝説のシリーズ”と化していて、ファンであっても新作が発売されるのは奇蹟が起きない限りありえないのではないかと思ってしまうほどの存在となっていたのですが、前作から14年ぶりの新作である本作がついに発売となりました。

 ちなみに、著者の名前である“りょう”の漢字は(閲覧環境によっては文字化けしてしまう)環境依存文字であるため、ネット上では平仮名や片仮名で表記される場合が多くなっています。

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 私立探偵である沢崎が今回受けた依頼は、金融会社の支店長・望月による“赤坂にある料亭の女将の身辺調査”で、沢崎が動き始めてすぐに、調査対象である女将がすでに亡くなっていることが判明。

 そのことを依頼者へ伝えに金融会社へ向かうも、不在であった依頼者と会えないばかりか、その場で強盗事件に出くわすことに.....。

 そこから沢崎は、依頼者の意図も不明で依頼者自身も行方不明となるこの謎めいた調査を進めつつ、その過程で関わることになるいくつもの事件や騒動に巻き込まれていくのですが、そんな謎が謎を呼ぶストーリー展開やそれを支えるプロットはベテランならではの巧みさで形作られていますし、それを魅力的な文章力で描いていくので、やはり一旦読み始めてしまえば自然にグイグイと惹きつけられてしまうこと間違いなしです。

 それに、皮肉屋で昔堅気という典型的なハードボイルド探偵である主人公のキャラクターや、登場人物たちと繰り広げる思わずニヤリとしてしまうような会話ややり取りの数々、細部にまでこだわった小道具・演出などなど、“これぞハードボイルド系探偵小説!”といった雰囲気で作品全体が覆われているので、まさに本物のハードボイルド小説を堪能できますし、“探偵・沢崎の物語”を長い間待ち望んで来た読者であれば(懐古の気持ちに浸りつつ)大満足の読み応えとなるでしょう。

 とはいえ、ストーリー的にはクライマックスに向けて爆発的に上昇していくというよりは物語が淡々と進んでいくといった感じですし、読者を圧倒するようなエンタメ的カタルシスがあるようなタイプでもないので、本作でシリーズ初読みの人が過去のシリーズ作品のあまりに偉大すぎる実績や評価から期待を高め過ぎてしまうと、少々物足りないというか拍子抜けした読後となってしまうかもしれません。

 なので、シリーズ初期作における共通した謎となっていた“身元不明であった(主人公の)パートナーの安否”に関しては(本作を先に読むと)ネタバレとなってしまうこともあるので、過去シリーズ作未読の人は1作目から順に読んでこのシリーズの面白さや楽しみ方を体に染み込ませたうえで本作を読んだ方が、この発売されたこと自体が“事件”である本作ならではの(原りょう作品でしか味わうことの出来ない)魅力を最大限に堪能できるのではないでしょうか。


> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  個人的評価の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


  【 “原尞(りょう)”関連記事 】

  > No.1009 「それまでの明日」
  > No.0777 「ミステリマガジン700 【国内篇】」

  > No.0351 「愚か者死すべし」
  > No.0321 「さらば長き眠り」
  > No.0260 「天使たちの探偵」
  > No.0135 「私が殺した少女」
  > No.0011 「そして夜は甦る」


 「サーチライトと誘蛾灯」櫻田智也 <<< PREV
          NEXT >>> 「分かったで済むなら、名探偵はいらない」林泰広

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

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2018年3月23日 (金)

『サーチライトと誘蛾灯』 櫻田智也 > 「このミス」完全読破 No.1008

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1008

 『サーチライトと誘蛾灯』 櫻田智也

   「このミス」2019年版 : ?位

   受賞(候補) : 「ミステリーズ!新人賞」受賞作
               『サーチライトと誘蛾灯』 収録

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読了日 : 2018年2月11日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2017年11月>

サーチライトと誘蛾灯 (ミステリ・フロンティア)サーチライトと誘蛾灯 (ミステリ・フロンティア)
櫻田 智也

東京創元社 2017-11-13
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 著者の櫻田智也は、インターネットコンテンツ“デイリーポータルZ”の元ライターという経歴を持っているのですが、2013年に「友はエスパー」で“創元SF短編賞”の候補となった後、同じ年に「サーチライトと誘蛾灯」で“ミステリーズ!新人賞”を受賞。

 ただ、(受賞作がすぐに発売される“長編が対象の新人賞”とは違って)短篇が対象の新人賞を受賞しても単行本デビューとなるまで年数が掛かる場合が多くあるのですが、この著者の場合もその例に漏れず、受賞から4年後にようやくのデビューとなりました。

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 というわけで本作は、「サーチライトと誘蛾灯」「ホバリング・バタフライ」「ナナフシの夜」「火事と標本」「アドベントの繭」の五篇を収録したシリーズ短篇集です。

 主人公であり探偵役となるのは、30代らしき見た目の青年ながら珍しい昆虫を探して放浪している魞沢泉(えりさわ・せん/"えり"は環境依存文字:魚偏へんに入)で、そんな主人公と関わることになった人物の目線で語られていきます。

 この主人公というのが(“昆虫好き”というイメージそのままに)少年のような純粋さや無邪気さを伴う穏やかで天然な性格なので、登場人物たちとの会話ややり取りは、微妙にズレたところがあるかと思えば絶妙な掛け合いを見せるなど、軽妙で楽しい雰囲気に満ち溢れているのですね。

 そして本作の特徴というのが、(単行本のあとがきにも書かれているように)泡坂妻夫の“亜愛一郎シリーズ”を意識して作られていることでして、それ故に主人公たちの軽妙なやり取りの中に伏線が巧妙に仕込まれていて、コミカルな雰囲気とミステリトリックとの融合具合が絶妙なものとなっているので、気軽な感じで読み進めていると意外に読み応えあるミステリ的な刺激に“おッ”と思わされるのではないでしょうか。

 それでもまあいわゆるユーモアミステリに分類されてしまうような作品かなと思うものの、後半に収録されている二篇は主人公があまり関わってこない(または全く関係しない)過去話が中心なこともあってか、(前半三作とは少々作風が異なり)情緒的な雰囲気やシリアス系物語としての読み味がとても魅力的に感じられたので、本作が面白かったのはもちろんですが、それ以上に次作以降への期待が大いに高まる読後感となりました。


> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  個人的評価の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


 「彼女の色に届くまで」似鳥鶏 <<< PREV
                  NEXT >>> 「それまでの明日」原尞(りょう)

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  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

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2018年3月15日 (木)

「このミス2019年版」月別ランクイン候補作品(2018年4月)

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 とうとう10年目となる“月別ランクイン候補作品”ですが、「このミステリーがすごい!2019年版」対象作品についても引き続き実施していこうと思います。

 この“月別ランクイン候補作品”とは、自分は日頃から“どんな作品が「このミス」にランクインしそうかな?”と色々とチェックしているので、どうせならそれを刊行された月(奥付記載の月)別にまとめてしまおう!ということで始めた企画です。

 ここでは、とりあえず「このミス」の対象になりそうな作品をピックアップして、作者やシリーズの「このミス」実績ごとに分けて並べています。

 なお、読んだうえでのランクインするかどうかの予想に関しては、「このミステリーがすごい!2019年版」ランキング(順位)予想の方をご覧ください。


 << この記事は現時点で未完の状態なので、情報を仕入れ次第(&Amazonに作品のページが作られ次第)、新たに対象作品を追加していく予定です(追加情報は「このミス」完全読破 説明&読破本リストの“更新情報”欄に書いていきます) >>

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>> 2018年4月発売の「このミス」ランクイン実績のあるシリーズ作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ
 * シリーズ過去作品の作品名部分のリンク先は、当ブログ感想記事
 * 作者名横のカッコ内は、作者の「このミス」20位以内ランクイン作品数

 ドラゴンスリーパー / 長崎尚志 (1作) * シリーズ2作目
        〈1作目「パイルドライバー」が17年版14位にランクイン〉


 ドロシイ殺し / 小林泰三 (1作) * シリーズ3作目
        〈1作目「アリス殺し」が14年版4位にランクイン〉

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>> 2018年4月発売の「このミス」ランクイン実績作家の作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ
 * 作者名横のカッコ内は、「このミス」20位以内ランクイン作品数

 あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続 / 宮部みゆき (17作) * シリーズ5作目
 悲体 / 連城三紀彦 (6作)
 カットバック 警視庁FC2 / 今野敏 (5作) * シリーズ2作目
 豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件 / 倉知淳 (4作)
 黙過 / 下村敦史 (2作)
 隠蔽人類 / 鳥飼否宇 (2作)
 ペインレス(上・下) / 天童荒太 (2作)
 平凡な革命家の食卓 / 樋口有介 (2作)
 軍艦探偵 / 山本巧次 (1作)

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>> 2018年4月発売の「このミス」ランクイン実績なしも
          21~40位に入ったことのある作家の作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ
 * 作者名横のカッコ内は、過去の「このミス」21~40位作品数

 紅のアンデッド 法医昆虫学捜査官 / 川瀬七緒 <2作> * シリーズ6作目
 あの夏、二人のルカ / 誉田哲也 <1作>

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>> 2018年4月発売の
    日本推理作家協会賞(推協賞)短編部門の受賞作・候補作
    および年間傑作選アンソロジー選出作を収録した作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ
 * 作者名横のカッコ()内は、「このミス」20位以内ランクイン作品数
 * 作者名横のカッコ<>内は、過去の「このミス」21~40位作品数
   (「このミス」ランクイン作家の場合は省略)
 * 他の項目と重複している作品もあります

[ “” ]


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>> 2018年4月発売のミステリ(エンタメ)系新人賞受賞(候補)作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ

[ “メフィスト賞”受賞 ]
 コンビニなしでは生きられない / 秋保水菓


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>> 2018年4月発売の
     「このミス」で40位以内に入ったことはないものの
     「本格ミステリ・ベスト10(本)」
     「週刊文春ミステリーベスト10(春)」
     「ミステリが読みたい!(早)」
     にはランクイン経験のある作家の作品 <<

 * 「週刊文春ミステリーベスト10」は
   (「このミス」が始まった)1988年以降のランクイン作家のみ対象
 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ


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>> 2018年4月発売の「このミス」の候補かもしれない作品 <<

 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ

 ステイ・ゴールド / 池田久輝
 二人の推理は夢見がち / 青柳碧人
 ウェンディのあやまち / 美輪和音
 砂の家 / 堂場瞬一
 ギロチンハウス 課長 榊江梨子の逆襲 / 大石直紀
 ファントムレイヤー 心霊科学捜査官 / 柴田勝家 * シリーズ3作目
 向こう側の、ヨーコ / 真梨幸子
 傍流の記者 / 本城雅人
 葬偽屋に涙はいらない / 森晶麿 * シリーズ2作目
 バビロンの階段 / 蜂須賀敬明
 法廷弁論 / 加茂隆康
 バルス / 楡周平
 歪んだレンズ / 宮城啓

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>> 2018年4月発売の宝島社作品 <<

 * 「このミス」では集計対象外(「本ミス」「文春」「早ミス」は対象)
 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ

 玉村警部補の巡礼 / 海堂尊 * シリーズ2作目

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>> Amazonに販売ページが作られる前の主な4月発売予定作品 <<

 * 作者名横の()内は、「このミス」20位以内ランクイン作品数
 * 作者名横の<>内は、過去の「このミス」21~40位作品数
   (ランクイン実績作家の場合は省略)


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 NEXT >>> 「このミス2019年版」月別ランクイン候補作品(2018年5月)

 「このミス2019年版」月別ランクイン候補作品(2018年3月) <<< PREV


 「月別ランクイン候補作品」の一覧は、「このミス」完全読破 読破本リストにてご覧ください。


  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2018年3月13日 (火)

「このミス」ランクイン作品文庫化リスト(2018年4月)

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 「このミステリーがすごい!」にランクインする作品というのは、ほとんどが単行本やノベルスで刊行された作品なので、“文庫化されてから読んでみよう”と考えている方も多くいるのではないでしょうか。

 なので、「このミス」の1~20位にランクインした作品、およびあと一歩でランクインを逃した作品(21~40位)の文庫化リストを、文庫版発売月別にまとめてみたいと思います。


 * 作品名部分のリンク先は、「Amazon」の詳細ページ

 * シリーズ作品紹介文中の作品名部分のリンク先は、当ブログ感想記事

 * シリーズ作品のランクイン実績は、2018年版までの記録

 << この記事は現時点で未完の状態なので、情報を仕入れ次第、新たに対象作品を追加していく予定です(追加情報は「このミス」完全読破 説明&読破本リストの“更新情報”欄に書いていきます) >>

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 【 2018年 4月 発売 】


  ウロボロスの偽書(上・下) / 竹本健治

 << 1992年版 10位 >>

   ・「週刊文春ミステリーベスト10」 6位

 ★ “ウロボロスシリーズ”の1作目
   .(2作目「ウロボロスの基礎論」も
    1996年版18位にランクイン)

 ★ リアリティと非現実感が交錯する!
   竹本健治が連載を始めた本格推理に、
   いつのまにか埼玉で起こった女性連続殺人事件の、
   犯人を名乗る男の手記がまぎれこんでいた!
   現実と虚構の境界線はあいまいになり、
   事件は思わぬ展開に。
   私たちが暮らすこの世界も
   どこからどこまでが現実なのか、
   次第にあやふやになってくる、
   奇々怪々な超ミステリ。

 ★ 新装版として再文庫化

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  彼女がエスパーだったころ / 宮内悠介  <<感想記事はこちら!>>

 << 2017年版 16位 >>

   ・「吉川英治文学新人賞」受賞
   ・「ミステリが読みたい!」 4位
   ・「ベストSF2016」 7位

 ★ 吉川英治文学新人賞受賞作。
   進化を、科学を、未来を――人間を疑え!
   百匹目の猿、エスパー、
   オーギトミー、代替医療……
   人類の叡智=科学では捉えきれない
   「超常現象」を通して、
   人間は「再発見」された――。
   デビューから二作連続で
   直木賞候補に挙がった新進気鋭作家の、
   SFの枠を超えたエンターテイメント短編集。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 << 「このミス」で41位以下または0票だった
       当ブログ読了済みの4月文庫化作品 >>

  EPITAPH東京 / 恩田陸  <<感想記事はこちら!>>
  現代詩人探偵 / 紅玉いづき  <<感想記事はこちら!>>

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 「このミス」ランクイン作品文庫化リスト(2018年3月) <<< PREV


 “「このミス」ランクイン作品文庫化リスト”の一覧は、「このミス」完全読破 読破本リストにてご覧ください。


  >>> 「このミス」完全読破 説明&読破本リスト <<<

2018年3月 8日 (木)

『彼女の色に届くまで』 似鳥鶏 > 「このミス」完全読破 No.1007

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1007

 『彼女の色に届くまで』 似鳥鶏

   「このミス」2018年版 : 40位

   受賞(候補) : (「日本推理作家協会賞〈短編部門〉」候補作
             『極彩色を超えて』<『鼠でも天才でもなく』を改題>収録)

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「本格ミステリ・ベスト10」 18位

   読了日 : 2018年2月10日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 単行本 <2017年3月>

彼女の色に届くまで彼女の色に届くまで
似鳥 鶏

KADOKAWA 2017-03-29
売り上げランキング : 106873

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by G-Tools

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 「雨の日、光の帝国で」「極彩色を超えて」「持たざる密室」「嘘の真実と真実の嘘」「そして君になる」の五章から成る連作集です。

 主人公の緑川礼は、画商の息子(実家が画廊)ということもあって幼き頃から絵が抜群に上手かったため、将来は超有名画家になって成功すると信じて疑わず、中学に入っても“自称天才”的な態度や考えのままに斬新さのみを追い求めたスケッチばかりを描き続けることに。

 しかし、その間に技術を磨き努力してきた同年代(中学生)の画家志望者との技量差が圧倒的に開いていることに気付いたのをきっかけに態度を改め、遅まきながら技術を鍛え始めて、高校も美術科ではなく普通科に通いつつ(部員が一人だけの)美術部で活動することになってから本作の本編がスタートします。

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 そんな主人公は美術(絵画)に関わる事件に度々巻き込まれるのですが、そんな事件の謎を解き明かす探偵役となるのが同じ学年の千坂桜(千坂さん)でして、実在する絵画をヒントにして天才的な閃きで事件の真相を浮かび上がらせてしまうその推理は鮮やかで見事なものなのです(その実在する絵画は単行本では本編中に白黒写真が、巻末にはカラー写真が掲載されています)。

 ただし千坂さんは根っからの無口でしかも他人と感性が異なることもあり、推理の説明を上手くできないため、千坂さんの推理内容を察したうえで周りの人に説明する役割を担うのが主人公なのですね。

 絵画に関わる事件が起き(実在の)絵画が謎を解くカギとなるという美術ミステリとしてオーソドックスともいえる展開は、シチュエーションの多様さや謎のタイプの豊富さ、本格的な推理内容などにより読み応えありますし、そこに千坂さんの閃きを読み取りつつそれを他の人にも分かりやすいように噛み砕いて解説するという主人公の“二段階推理”が加わることによって(単なる美術ミステリでは終わらない)本作ならではのミステリ的な魅力が満ち溢れていたように思います。

 そしてもう一つの読み所となるのが青春物語で、主人公と千坂さんコンビに、主人公の親友で筋肉ナルシスとの風戸翔馬やその他登場人物たちも加わって織り成すやり取りはコミカルさもあって楽しいですが、絵描きとしても天才でありながら自覚のない千坂さんに対し、(自分も画家を目指しているのに千坂さんの才能に圧倒されている)主人公が(千坂さんのために)画家になるための道を描き導いていくという、主人公の嫉妬や葛藤が激しく入り混じった心情や行動にこそ(青春物語だからこそ感じられる)強い印象と心に響くものがありました。

 さらには、似鳥作品ならではの大仕掛けが終盤で明らかになったり、今回は高校編だけに留めておけばシリーズ化となりそうなのに一冊の中でその先まで描いてしまう出し惜しみの無さなどにより、連作としても青春物語としても完成度と濃度が高いので、“年度を代表するほどの大傑作”といったタイプではないものの、青春ミステリ好きの人にはぜひチェックしてみてほしい作品ですね。


> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
  個人的評価の詳しい説明・評価基準は
  「このミス」完全読破 説明&読破本リストにてご確認ください


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2018年3月 2日 (金)

『少女を殺す100の方法』 白井智之 > 「このミス」完全読破 No.1006

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1006

 『少女を殺す100の方法』 白井智之

   「このミス」2019年版 : ?位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読了日 : 2018年2月2日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2018年1月>

少女を殺す100の方法少女を殺す100の方法
白井智之

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 白井智之は、横溝正史ミステリ大賞(新人が対象の賞)の最終候補止まりながら(選考委員であった有栖川有栖・道尾秀介の強い推薦を受けて)刊行された『人間の顔は食べづらい』で2014年にデビュー。

 その翌年に発売されたデビュー2作目の『東京結合人間』は「このミス」と「本格ミステリ・ベスト10(本ミス)」にランクインし、さらに1年後に発売のNo.0946「おやすみ人面瘡」は「このミス」「本ミス」共に前作から順位を上げてのランクイン(どちらもベスト10入り)と、まだ新人作家といえるほどの活動期間ながらすでに“最新のミステリ小説をチェックするうえで避けては通れない”と思わすほどの存在感を身に付けています。

 ただそんな高評価とは裏腹に、“エログロホラーと本格ミステリとの歪な融合”という好む人をかなり選ぶようなマニア向けともいうべき作風なのですが、デビュー4作目となる本作も、『少女を殺す100の方法』というタイトルに、「14歳は 殺したいほど 可愛い。」と書かれた単行本の帯など、読む前から(軽い気持ちで興味を持つような読者を拒絶するかのような)狂気や物騒さや不謹慎さが感じられる作品となっていますね。

 ちなみに本作も含めてこれまで発表された作品は全てシリーズものではないので、どの作品から読んでも問題ありません。

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 というわけで本作は、「少女教室」「少女ミキサー」「「少女」殺人事件」「少女ビデオ 公開版」「少女が町に降ってくる」の五篇を収録した著者初の短篇集で、各篇に繋がりはないものの、わずかながらリンクするような描写も。

 他には各篇ごとに少女が20人ずつ死ぬという共通点もありながら、学園ミステリ、ソリッド・シチュエーション・ホラー、メタミス、エログロノワール、奇想SFと、その内容は驚くほどバリエーションに富んでいます。

 もう少し具体的に書くと、女子校の(密室と化した)教室で生徒が大量に殺されていたり、ある法則により動くカッターが仕込まれた巨大殺人ミキサーに少女たちが放り込まれたり、探偵小説研究会の先輩が書いたミステリ小説の犯人当てに後輩が挑んだり、次々と連れられて来る少女たちに謎の肉を食わせるのが仕事の男と肛門から腸がぶら下がっている少女との物語だったり、定期的に空から少女たちが降ってくる村の物語だったり。

 まあいずれにしろ普通でも正気でもない奇怪でねじくれた話ばかりなのですが、やはり著者の持ち味である“エログロ”と“本格ミステリ”はどの話にも遠慮なくぶち込まれていて、その強度はそれぞれの話で多少異なるものの白井作品ならではの不謹慎さに満ちたエログロ&本格ミステリを堪能出来ると思います。

 とはいえ、前作まではエログロノワール要素と本格ミステリ要素とがガッチリと噛み合っていたというよりは(無理やり造られたキメラのように)歪で強引に融合させられていた印象で、そこがまた魅力的だったり評価が激しく分かれる要因だったりしたものの、本作は短篇ということもあってか、そんなエログロと本格ミステリとの融合に歪さや強引さはあまり感じられなかったのですよね。

 それでも各物語の設定が奇抜で狂気全開なのでインパクトや禍々しさは(過去作にも)負けてはおらず、そんな物語にエログロと本格ミステリが自然に融合することによって(特に後半の二篇には)前作までにはなかった物語的な魅力や濃厚さが生み出されていて、そんな物語の中にあるからこそエログロも本格ミステリ要素もより刺激的で印象的になっていたように思います。

 まあこれは個人的な感想ですし、読む人を選ぶ作風なのは変わらないので、多くの人にお薦めできるタイプの作品ではないのですが、前作までと比べて“一皮剥けた”と感じさせるほどの作風の変化があったことは間違いないので、過去作を読んで肌に合わなかった人にも(今回も同じ感想となる可能性はあるとはいえ)本作で白井作品に再挑戦してほしいですし、「少女ミキサー」「少女ビデオ 公開版」の二篇は特に平山夢明作品が好きな人にお薦めしたいですね。


> 個人的評価 : ★★★★★ ★★☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
   (★の数が少なくても面白くなかったということではありません)
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2018年2月27日 (火)

『後妻業』 黒川博行 > 「このミス」完全読破 No.1005

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1005

 『後妻業』 黒川博行

   「このミス」2015年版 : 15位

   受賞(候補) :

   総合ランキング :

   年度ランキング : 「週刊文春ミステリーベスト10」 7位

   読了日 : 2018年1月30日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"後"

   読んだ版 : 単行本 <2014年8月>

後妻業 (文春文庫)後妻業 (文春文庫)
黒川 博行

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 黒川博行は、1984年のデビュー以来数多くの作品を発表して来たベテラン作家ですが、そんな作家人生の中でも(デビュー30周年を迎えた)2014年は特に大活躍の一年となりました。

 まずは人気の“疫病神シリーズ”の新作であるNo.745「破門」にて、自身6度目、このシリーズだけでも3度目のノミネートにしてようやく直木賞を受賞し、「このミス」でも初となるベスト10入りを果たすなど、著者の新たな代表作となるほどの評価を受けることに。

 そして受賞第一作として同年に発売されたのが本作ですが、刊行直後に本作で扱った(当時はまだあまり知られていなかった)犯罪が現実にも発覚し、メディア等でセンセーショナルに取り上げられるほどの大事件となったこともあって、本作に対しても(“まるで預言書のようだ”と話題になるなど)注目が集まりましたし、2016年には映画化もされています。

 ただそんな話題性だけでなく、「このミス」では『破門』とのダブルランクインを果たし、「週刊文春ミステリーベスト10」では『破門』を差し置いてベスト10に入るなど、ミステリ系ランキングでも高く支持されたのですね。

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 タイトルになっている“後妻業”とは、金持ちの高齢男性の後妻に収まり、その男性の死後に遺産を根こそぎ奪っていくことを生業としている犯罪で、本作と(本作刊行直後に発覚した)青酸連続不審死事件によってその名が広まりました。

 本作においては、妻に先立たれた寂しさから結婚相談所に登録した資産家の中瀬耕造(91歳)が、そこで知り合った22歳下の小夜子と同居を始めるも、間もなく脳梗塞により死去。

 元々小夜子に不信感を抱いていた構造の娘である尚子と朋美は、構造が死んだ直後から本性を現して遺産を掻っ攫っていこうとする小夜子に対し、学生時代の同級生である弁護士の協力を得て徹底抗戦する構えをみせることに。

 という展開となれば、普通なら被害者(正義)側が犯罪者(悪)側に立ち向かっていく勧善懲悪的な物語となっていきそうではありますが、そこはやはり黒川作品なので、小夜子とその黒幕である結婚相談所所長・柏木による周到な計画を基にした犯罪サスペンス劇や、協力関係にありながらお互いに相手を出し抜こうと企むなどスリルあふれる関係性、そんな二人による関西弁でのテンポ良く小気味よいやり取りなど、犯罪者側を中心に描かれていきます。

 そして被害者側の方も、小夜子の犯罪の尻尾を掴み追い込むべく動く探偵が、この事件を利用して私欲に走り始めたりもするので、まさに悪vs悪が激しくぶつかり合う犯罪小説となっていますし、そんなノワール的な作品を黒川博行が手掛けているので面白くならないはずがないのですよね。

 なので、被害者側に共感できたり犯罪者側が正しく罰を受けるような物語を期待してしまうと読んでいて乗り切れない感があるかもしれませんが、犯罪者が(極悪人だし好きになど決してなれないのだけれど)魅力的にドス黒く輝いてみえる犯罪小説の傑作だと思うので、読めば直木賞受賞作『破門』と同年発売ながらこれだけ高い評価と話題性を得たのも当然だと実感できるのではないでしょうか。


> 個人的評価 : ★★★★★ ★☆☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
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2018年2月20日 (火)

『虹の向こう』 池田久輝 > 「このミス」完全読破 No.1004

「このミステリーがすごい!」完全読破 No.1004

 『虹の向こう』 池田久輝

   「このミス」2019年版 : ?位

   受賞(候補) : (「日本推理作家協会賞〈短編部門〉」
             候補作 『影』 収録)

   総合ランキング :

   年度ランキング :

   読了日 : 2018年1月29日

   読んだ時期: 「このミス」ランキング発表"前"

   読んだ版 : 単行本 <2017年11月>

虹の向こう虹の向こう
池田 久輝

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 「虹」「影」「空」「スターティング・オーバー」の四篇から成るノンシリーズ短篇集です。

 まず最初の「虹」は、訳ありの寺を親から継ぐのに踏ん切りがつかない主人公が、学生時代からの親友の頼みで、何らかのトラブルを抱えているらしい(親友の)元妻について(探偵のように)調査するという、ハードボイルド色の強い作品です。

 続く日本推理作家協会賞(短編部門)候補作である「影」は、「虹」から続けて読むと(名前が出てこないこともあって)同じ主人公のように思えてしまうほどに「虹」と空気感が似た作風となっています。

 こちらの主人公は、押しが強く威張り屋な刑事から情報屋としてこき使われている私立探偵で、その刑事からある女性の尾行調査を依頼(命令)されたため、尾行の目的を知らされていないうえに(尾行対象である)女性に怪しい行動が見受けられないという(主人公にとって)謎めいた尾行調査を行っていくことに。

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 三作目の「空」は一転して高校生が主人公で、高校野球最後の試合を終えた直後にチームメイトから問いかけられた謎、さらに部活帰りの常連となっていた鉄板焼き屋がいつの間にか店を閉めていたという謎を中心にして、青春物語が繰り広げられていきます。

 ラストを飾る「スターティング・オーバー」の主人公は刑事で、かつて指導を受けた大先輩(二年前に警察を定年退職)から、青年(沖縄出身)の失踪した兄を捜してほしいと頼まれたものの、刑事は個人的な依頼を受けることが出来ないため、それを知っているはずの大先輩が何故自分に頼んで来たのか不思議に思いつつ青年と関わっていく話。

 四つの短篇の共通点は、京都を舞台としているという他にもありまして、それは、まず主人公が(主に依頼内容に関して)謎を抱えながら行動することになり、その過程で主人公がその謎の真相に気づくも読者には明かされず、クライマックスで読者にも真相が開示される、といった(大まかな)流れで、このミステリ的な展開により謎に対する求心力が二段階加速するかのように感じられるので、一度読み始めればこの謎めいた物語にいつの間にか入り込んでしまうのでは。

 そして本作を一言で表すなら“味がある”なのではないかと思うのですが、一篇辺り50ページほどという分量だったり、ミステリ的にもハードボイルド的にもガッツリとした読み応えがあるタイプではないので、読む人によっては“薄味過ぎる”とか“味気がない”などの感想になってしまうかもしれません。

 ただ、好みに合う人であれば、ミステリ要素とハードボイルド要素とが絶妙な匙加減で混ざり合ったこの作品集の雰囲気に心地よく酔いしれ味わい尽くせるに違いないので、多くの人にお薦めしたい一品というわけではないものの、この味が分かる通好みの人を選りすぐって誘いたくなるような短篇集ですね。


> 個人的評価 : ★★★★★ ☆☆☆☆☆

 * 個人的評価は、減点方式ではなく加点方式となっています
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 「棲月 隠蔽捜査7」今野敏 <<< PREV/NEXT >>> 「後妻業」黒川博行

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